大判例

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大阪地方裁判所 昭和42年(行ウ)114号 判決

昭和四二年(行ウ)第一一四号事件原告

同年(ワ)第七一一八号事件被告

株式会社くいだおれ

代理人

鳥巣新一

昭和四二年(行ウ)第一一四号事件被告

同年(ワ)第七一一八号事件原告

大阪市

昭和四二年(行ウ)第一一四号事件中の条例及び規程の無効確認を求める訴につき

市長

中馬馨

昭和四二年(ワ)第七一一八号事件及び同年(行ウ)第一一四号事件中の債務不存在確認を求める訴につき

大阪市水道局長

長谷川寛一

指定代理人

平敷亮一

外三名

主文

第一、昭和四二年(行ウ)第一一四号事件につき

一、原告の、昭和四〇年四月二日改正により大阪市水道事業給水条例第二六条中特殊用の定めをした制定部分の無効確認を求める訴及び昭和四〇年四月二日改正により大阪市水道事業給水条例施行規程第二八条中特殊用の定めをした制定部分の無効確認を求める訴を、いずれも却下する。

二、原告の、水道使用料金債務不存在の確認を求める請求を棄却する。

第二、昭和四二(ワ)年第七一一八号事件につき

被告は原告に対し金一〇〇万四、四一〇円を支払え。

第三、訴訟費用は、昭和四二年(行ウ)第一一四号事件原告・同年(ワ)第七一一八号事件被告の負担とする。

第四、この判決は、第二の項に限り仮に執行することができる。

事実

(以下の事実及び理由欄の記載においては、昭和四二年(行ウ)第一一四号事件原告及び同年(ワ)第七一一八号事件被告を原告と表示し、昭和四二年(行ウ)第一一四号事件被告及び同年(ワ)第七一一八号事件原告を被告と、それぞれ表示する。)

第一、申立

(昭和四二年(行ウ)第一一四号事件)

一、原告

1  被告が昭和四〇年四月二日改正により大阪市水道事業給水条例第二六条中特殊用の定めをなした制定部分は無効であることを確認する。

2  被告が昭和四〇年四月二日改正により大阪市水道事業給水条例施行規程第二八条中特殊用の定めをなした制定部分は無効であることを確認する。

3  原告の被告に対する、昭和四二年四月分以降同年一〇月二六日までの間の水道料金合計金一、〇〇四、四一〇円のうち金三四二、九〇五円につき、水道使用料金債務の存在しないことを確認する。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

二、被告

(一)  本案前の申立

原告の本件訴のうち申立第1、2項を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

(二)  本案の申立

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

(昭和四二年(ワ)第七、一一八号事件)

一、被告

原告は被告に対し金一、〇〇四、四一〇円を支払え。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

二、原告

被告の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

〈以下省略〉

理由

第一昭和四二年(行ウ)第一一四号事件中の本件条例および本件規程の無効確認の訴えの適否

一、裁判権の存否

被告は、本件条例および本件規程の特殊用の制定部分の無効確認を求めるというような訴えは具体的事件といえないから裁判所の法令審査権が及ばない旨主張する。

言うまでもなく、裁判所がいかなる場合に裁判する権限を有し、または有しないかは、憲法およびこれをうける裁判所法の定めるところによつて決定されるべき事柄である。そして、裁判所法はその第三条で、「裁判所は、日本国憲法に特別に定めある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。」と規定しているから、本件条例および本件規程の特殊用の制定部分の無効確認請求について裁判所が裁判する権限を有するか否かは、右の請求が同法条にいうところの「法律上の争訟」に該当すると言うべきものか否かによる。

而して、憲法は三権分立の原理を採用しており、この原理は国家作用のうち国民の間に法律上の紛争がある場合に何が法であるかを判断し正しい法の適用を保障する作用を司法と呼び、これを裁判所の権限に属せしめているのであるから、ここにいう「法律上の争訟」とは、当事者間における具体的な権利義務ないしは法律関係の存否に関する紛争をいうのであつて、法律の適用により当該紛争が終局的に解決され得べきものであり、そのような解決方法が当該紛争の性質に照らして適当なものを言うものと解するのが相当である。したがつて、単に一般的、抽象的に、ある法令(条例、規程を含む)自体の効力ないし解釈を争うことは具体的な権利義務に関する争訟、すなわち、右にいう法律上の争訟に該当しないから、裁判所の権限に属しないものであり、ただ法令の規定自体が直接に個人の権利、義務に変動を及ぼすような具体的な内容をもつものでそこに紛争がある場合には、具体的な紛争として「法律上の争訟」というに妨げないものと言うべきである。

これを本件についてみるに、本件条例(別紙(一)参照)は、水道使用者を一般用、特殊用、湯屋用という用途別に区分し、その使用水量と料金の関係を定め、本件規程(別紙(二)参照)は、本件条例に定める用途別の適用基準を定めているにすぎないからこれらの条例及び規程が直接に原告の権利、義務に変動を及ぼすような具体的な内容をもつものでないことは明らかであり、これらの無効確認を求める原告の訴はいずれも不適法として却下すべきものである。

原告は、仮に本件条例及び規程が特定の者に法律関係を生ぜのめないとしても、行政事件訴訟法三六条は、「無効等確認の訴は当該処分又は裁決に続く処分により損害をうけるおそれのある者は提起することができる。」としており、原告は本件条例及び規程により当然に水道料金を徴収されることになるから、本訴は適法であると主張する。

しかしながら、行政事件訴訟法は、前記のとおり、裁判所が裁判権を与えられている法律上の争訟のうち行政に関する争訟についての手続等を定めたもので、同法三六条に言う「当該処分又は裁決」というのもその性質上当然それによつて個人の具体的な権利関係に変動を生じさせる行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為を言うのであつて、本件の条例及び規程の制定のように個人の具体的な権利義務に直接変動を及ぼすことのないものはこれに含まれないし、「損害をうけるおそれがある」というのも、特定の個人に具体的な損害を生ずるおそれがある場合を言い、本件のように、将来条例又は規程が適用されるときは過重の支出を余儀なくされるおそれがあるというような一般的、抽象的な損害はこれに該らないものと言うべきであるから、原告の主張は採用できない、

(因に、本件条例及び規程が原告の主張するように無効と言うのであれば、原告が現に被告の経営する水道水を利用し、それに伴つて被告が本件条例及び規程による水道料金債権の存在を主張し、原告がそれを抗争する段階に至つて始めて紛争は現実的・具体的な権利義務の存否に関する紛争、すなわち「法律上の争訟」として裁判権の対象になり得るものというべきである。)

第二昭和四二年(行ウ)第一一四号事件中の水道料金債務不存在確認請求および昭和四二年(ワ)第七、一一八号事件についての判断

一、被告が水道事業を経営する地方公共団体であり、原告が大阪市において飲食店を営む株式会社であること、被告が昭和四〇年四月二日かねて制定していた水道事業給水条例中第二六条を別紙(一)記載のとおりに改正し(本件条例をいう)、同年同月同日右条例の改正に伴い大阪市水道事業給水条例施行規程中第二八条が別紙(二)記載のとおりに改正された(本件規程をいう)こと、および原告の昭和四二年四月分以降同年一〇月二六日までの水道水使用量が三〇、九二九立方メートルであること、原告の水道使用に対して本件条例および本件規程の特殊用の制定部分を適用して算出した水道料金(金一、〇〇一、九三五円および水道メーターの貸付け料(金二、四七五円)の合計金が一、〇〇四、四一〇円であることは、いずれも当事者間に争いがない。

二本件の争点は、本件条例および本件規程の特殊用の制定部分(水道料金についていわゆる用途別料金体系を採用し、一般用(家庭生治用水等)と区別して割高の料金を特殊用の該当者(飲食店等)から徴収する規定)が、憲法一四条をはじめとする、地方公営企業法二一条二項、地方自治法二四四条三項、水道法一四条四項四号の意味する差別的取扱禁止すなわち平等原則に違反するか否かにある。原告は本件条例および本件規程が前記憲法ほか諸法律の平等原則に違反すると主張し、被告は一般用、特殊用の用途区分ならびにその料金格差は合理的な理由に基づくものであるから適法であると抗争する。

ところで、憲法一四条の規定する平等原則は、あらゆる場合、あらゆる点で国民全部が絶対に平等であることを要求するものではなく、平等の要請のそのものの中におのずから合理的な制限を当然含んでいるのであつて、その制限がどの程度まで認められるかはその差別が合理的なものであるかによつて決すべきであると解するのを相当とする。なお、同条にいう「法の下の平等」は法適用の平等を意味するばかりでなく、法定立の平等をも意味するものであるから、実質上行政立法として法規の性格を有する本件条例および本件規程の制定もその制約を受け、特定の個人や特定の集団を差別することが許されないことは言うまでもない。

そこで按ずるに、〈証拠〉並に弁論の全趣旨を綜合すれば、つぎの事実が認められる。

(一)  本件条例および本件規程改正までの経緯

被告は明治二八年水道事業開始以来用途別料金体系を採用してきているが、昭和二三年六月用途による料金格差を強化し、本件条例および本件規程に定める「特殊用」という業種別の規定を設けた。そして、昭和三九年度においては被告の経営する水道事業は累積赤字が八三九、五一五、〇〇〇円になつていた。そこで、被告は昭四〇年四月二日水道事業の経営事情、学識経験者の意味、水道料金の変遷、他都市の水道料金体系を検討したうえ、本件条例および本件規程を制定するに至つた。

(二)  水道料金の内容

一般生活に直結する使用水量の範囲については別紙(一)記載のとおり、一般用、特殊用、湯屋用に共通する基本料金制度(一〇立方メートルまで一三〇円)を設けた。他方、水道水の奢侈的使用を規制し、多量の水道水の使用を抑制するため、別紙記載のとおり超過料金制を採り、消費量の増大に伴つて料金が逓増する料金規定を設けた。一般用と特殊用との料金格差は別紙(四)記載のとおりその割増率は1対1.352ないし1対一1.4の範囲である。この比率は改正前の1対1.7に比較して小さいものである。

(三)  水道料金規制の推移

1、明治二三年水道条例(法律第九号)が制定された。これは水道事業の独占性、公益性の観点から国家が規制することが望ましいことによる。同条例第三条によれば、水料の等級、価格、水料徴収の方法及び経営収入の概算については目論見書に詳記し内務大臣の認可を受けることになつていた。

2 昭和二一年から同二七年一二月一二日までの間は水道料金も物価統制令の適用を受け、主務官庁の認可額がそのまま統制額とされた。

3 昭和二七年八月水道料金の統制事務は物価庁から厚生省に引き継がれ、厚生省は同年一二月一二日限り、厚生省告示第三四〇号をもつて「物価統制令第四条の規定による水道料金の指定は地方公共団体の経営にかかる水道料金につき廃止する」旨決定した。これにより水道条例第三条による水道料金に対する認可制度も廃止された(同年一二月二〇日自丙財発第七四号)結果、公営水道料金は地方公共団体が自主的に決定しうることになつた。

4 昭和三二年六月一五日水道法(法一七七号)が制定され、地方公共団体の経営する水道事業の料金は届出制が採られた(同法一四条二項)。これは住民の意思を尊重するものである。

(四) 国(厚生省)の行政指導

国は、公営水道料金を地方公共団体が自主的に決定しうることになつた(昭和二七年一二月)後も、水道事業が公衆衛生に及ぼす重大な影響と多数国民の日常生活に密接な関係を有する公益性とにかんがみ、その運営の適正を期するとともに、健全な発達を図る必要上、これに密接な関係のある水道料金について引き続き行政指導を行うこととし(昭和二七年一二月一二日厚生省発衛第二三一号)、昭和三三年一一月一日(水道法制定後)衛水第六一号厚生省水道課長から都道府県衛生主管部(局)長宛により、適正な水道料金の算定を地方公共団体になさしめるため、社団法人水道協会が作成した「標準給水条例」を参考として送付した。

右標準給水条例は、水道料金についていわゆる用途別料金体系を採用し、用途を一般用、営業用、浴場用の三区分とし、このうち営業用とは「料理店、飲食店、娯楽場等の営業の用に水道水を使用する場合をいう」としており(原告の主張する特殊用はこれに該当する)、その適用基準は明定せず、事業主体の実情により適宜その種別又は用途を定めて規定することを予定している。

(五) 水道料金体系の種類と特色

1 用途別料金体系

これは給水絶体量の不足を奢侈的、娯楽的、副次的用水に高率の料金を課して使用の規制を行い、生活用水(必需用水)を確保するとともに、一般国民の生活用水の料金を低廉にしようとするもので、いわゆる政策料金体系といわれる。水道事業の公益性と独占性に基づくもので料金に公的賦課性を持たせていると言える。

右のように水道水を使用する人の態様によつて区別するものであるから巾広く種別を設けることは技術的に困難なので通常、一般用、営業用(特殊用)湯屋用等に区分され、その基準は「水道用水が日常生活に密着する度合」に求められているので、客観性が問題となる。

一般用には国民の生活に直結するものないし経済上の観点から直接生産に使用されるものが該当する。

営業用(特殊用)には、家庭生活及び生産に直接関係の薄いもの、すなわち、奢侈的、副次的なものが該当する。

湯屋用は公衆浴場の用に供されるものである。

この料金体系によると、一般用と湯屋用の料金を安くする(低所得者への配慮)のために、営業用(特殊用)の料金が高くなり、格差が生じることになる。

しかし、この体系は沿革上古くから採用され、長年にわたり、被告をはじめとして我が国の大多数の水道事業者がこの体系を採用している。

2 口径別料金体系

これは個々のサービスの供給に必要な費用に準拠して(個別原価主義)、水道料金を決定しようとするところから考案されたもので、単位時間内の給水サービスの受益度が概ね流量比に合致していることから、水道使用者の設置量水器の口径の大小によつて、水道料金を決定しようとする体系である。

費用負担の公平、客観性、明確性という点で用途別料金体系よりも優れているといわれている。

個別原価主義を貫くと基本水量制は必要でないが、水道事業の公益性にかんがみ、一般家庭用需要者が対象となる小口径のものについて基本水量制が採られている。

固定費の一定金額は需要家費とともに基本料金として配賦される基本料金制が採られている。

基本数金として配分された費用以外のものは従量料金として配賦され、均一単価制が採られる。

均一料金制度を採ると一般家庭(用)の料金が相当高くなることが欠点である。そこで政策的配慮がなされることになる。

現在、この体系を東京都、京都市、神戸市、尼ケ崎市、等が採用している。

厚生省としては行政指導の方針とするほど最良の数金体系として熟していないので現在検討中である。

(六) 水道事業の特質

ところで、水は人間生活に必要かつ不可欠のものであり、現在においては水道水の使用は国民の健康を守るために欠くことのできないものであることにかんがみ、前示の水道法が制定され、水それ自体が地域性を有するものであることおよび水道事業が適正かつ円滑に行われる必要があるところから、水道事業はその地方において独占性をもつものとして位置づけられ(同法六条)、同法一条、二条によれば、水道事業者は清浄にして豊富低廉な水の供給により公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与するべく努めなければならない。

他方、地方公共団体の経営する水道事業は地方公営企業法の適用を受け(同法二条一項)、同法一七条の二第二項は「地方公営企業の特別会計においては、その経費は当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てなければならない。」として独立採算制を建前とする事業であつて、出資、補助は特別な場合に例外的に認められるにすぎない(同法一七条の三、一八条)。

したがつて、水道料金は右の水道事業の特質(公益性と独立採算制)に応じたものでなければならず、当該水道事業の置かれている事情、水道料金が住民に及ぼす影響、その他諸般の事情を考慮して決定されるものであるということができる。

右の見地に立つて、前記判示の本件条例および本件規程改正までの経緯、水道料金の内容、水道料金規制の推移、国(厚生省)の行政指導およびその内容、水道料金体系の種類と特色を考え合わせると、本件条例および本件規程の特殊用の制定による原告(特殊用の適用をみる)と一般用の適用を受ける者との水道料金の面(政治的、社会的、経済的関係)における差別は、公共の福祉の要請に基づく合理的な差別であるというべきである。

もつとも、〈証拠略〉によれば、

(一) 被告が制定した本件条例および本件規程の特殊用に該当する原告の飲食店においては水道水が顧客の飲水、食器の洗滌等一般公衆の衛生面に使用されていること、

(二) ビール、ジュースの飲料水製造会社、自動車の洗車業者、豆腐屋、市場、工場等は大量に水道水を使用しているが、その料金は一般用であること、

(三) デパートおよびビルディング内の食堂の使用する水道水の料金は、デパートおよびビルディングの総使用水について、その総建坪数と食堂部分の坪数との比率(面積比)を求め、それに比例して食堂の使用水量を算出して、特殊用の規定を適用し、残りの水道水については一般用を適用していることが認められるけれども、(一)飲食店における飲水、食器食品の洗滌水の使用料は消費者に転嫁することのできる性質のものであり、公衆衛生に関係があるといつても大衆性、公共性の高い公衆浴場の場合と同一視しなければならないほどのものではないというべきであり、(二)大量使用という点においては、被告がその対策として逓増料金制を採用していることは前記判示のとおりであり、工業用水等は直接生産に関係するものであるとともに地盤降下防止対策としての井戸掘削の制限にともなう代償としてその料金を低くしたものと考えられるから、これをもつて公正妥当を欠く料金制度とは言えない、(三)デパートおよびビルディング内の食堂が使用する水道水の割合は面積比に比例するものではなく、食堂部分の使用する量がその比率以上であることが推認される。しかし、これは水道行政の技術的、事務的、経営的考慮に基づくものであるから、必ずしも妥当を欠く措置ということはできず、これをもつて本件条例および本件規程が前記憲法ほか諸法律の規定する平等原則に反する不合理な差別的取扱とは言えない。

したがつて、原告のこの点に関する主張は採用できない。

してみると、被告が制定した本件条例および本件規程は適法であるから、前記判示事実によれば、被告は原告に対し、金一、〇〇四、四一〇円の水道料金債権を有することになる。

三そこで、原告の受領遅滞の主張について判断するに、〈証拠略〉によれば、原告は本件条例および本件規程の特殊用の制定部分は無効であるとして、一般用の水道料金分に該当する金六六一、五〇五円を昭和四三年八月二〇日ごろ被告方へ小切手で送付し、被告はその受領を拒絶したにすぎないから、原告が前記債務の本旨にしたがう履行の提供をしたとは言えない。よつて、この点に関する原告の主張は採用できない。

してみると、昭和四二年(行ウ)第一一四号事件中の水道料金債務不存在確認を求める原告の請求は失当であるから、これを棄却すべきであり、昭和四二年(ワ)第七、一一八号事件については、被告の請求は理由があるから、これを認容すべきである。

(結び)

以上の次第であるから、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条、仮執行の宣言については同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。(井上三郎 藤井俊彦 大谷種臣)

別紙(一)

第二六条 料金は一月について次のとおりである。(以下抜抄)

(1) 専用給水装置

基本料金

超過料金

用途

一立方メートルについて

一〇立方メートルまで   一三〇円

ただし、八立方メートルまでのものについては 一〇〇円

一般用

一〇立方メートルをこえ

三〇立方メートルまでの分

一七円

三〇立方メートルをこえ

五〇立方メートルまでの分

二二円

五〇立方メートルをこえる分

二五円

特殊用

一〇立方メートルをこえ

三〇立方メートルまでの分

二三円

三〇立方メートルをこえ

五〇立方メートルまでの分

三〇円

五〇立方メートルをこえる分

三五円

湯屋用

一〇立方メートルをこえる分

一五円

(2) 前項に定める用途の適用基準については、局長が別に定める。

別紙(二)

第二八条 条例第二六条に規定する用途の適用基準は、次のとおりとする。

専用給水装置

用途

適用基準

一般用

特殊用及び湯屋用の用途以外の用に供するもの

特殊用

一 旅館(宿泊料が五〇〇円をこえるもの)、料理店、飲食店、(営業面積が三三平方メートル

をこえるもの)、娯楽場(営業面積が六六平方メートルをこえるもの)及び映画、演劇、職業

スポーツ等の興業場等客の来集を目的とする場屋の用に供するもの

二 噴水、泉池、滝等観賞の用に供するもの

三 湯屋用に該当するもの以外の公衆浴場の用に供するもの

四 臨時の用に供するもの

五 その他これらに類するものの用に供するもの

湯屋用

公衆浴場法(昭和二三年法律第一三九号)による許可を受けた公衆浴場(昭和三八年一一月三〇日大阪府告示第九七三号一に規定する入浴料金の統制額の適用を受けるものに限る。)の用に供するもの。

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